解体分析エキスパート 第8回:家庭用エアコンの解体分析
こんにちは!
「解体分析エキスパート」第8回では、家庭用エアコンを対象に解体分析を行いました。エアコンは、熱交換器、ファン、モーター、電装部品、外装部品など、多くの部品から構成されています。


今回の解体では、M4サイズの小ねじを中心に、用途に応じて形状や表面処理の異なる締結部品が使い分けられていることが確認できました。

今回の解体分析では、確認できた締結部品は合計約130点でした。ねじ類を中心に、袋ナット、フランジナット、止め輪、ばね、シャフト、ベアリングなど、さまざまな機械要素が使用されていました。
解体過程と構成部品の概要
外装パネルから内部部品まで順番に分解し、使用されている締結部品や機械要素を確認しました。









小ねじ類では、M4サイズが中心となっており、一般的ななべ小ねじのほか、セムスねじ、アース用の特殊形状ねじ、三価ホワイト品などが使用されていました。
また、M2~M5までのねじも使用されており、締結する部品や使用スペースに応じてサイズが使い分けられていました。
そのほか、袋ナット3点、フランジナット2点、ベアリング2点、シャフト1点、アンカーボルト1点、止め輪1点、ばね3点、波座金1点、その他C-パーツ10点を確認しました。

注目ポイント①:外パネルに使用されたプラスチック製平座金付きセムス
外パネルの固定には、十字穴付き六角アプセットねじ P=2セムス M4×11.5が20個使用されていました。特徴的なのは、組み込まれている平座金がプラスチック製だったことです。


一般的なセムスねじでは金属製ワッシャーが使用されることが多いですが、今回のようにプラスチック製とすることで、外装パネルとの接触面を保護するとともに、金属同士の直接接触を避け、絶縁や異種金属接触による腐食の抑制、振動・異音への配慮などを目的としていると考えられます。
また、セムス構造により、ねじとワッシャーを一体化できるため、組立時の作業性にも配慮されています。つまり、この一本のねじには、「固定する」だけでなく、「接触面を保護する」「電気的な絶縁や接触を考慮する」「振動や腐食に配慮する」といった複数の設計意図が込められていると考えられます。
注目ポイント②:アース用ねじの「3点ポッチ」
今回特に注目したのが、アース接続に使用されていた頭部下に3点ポッチを持つなべ小ねじです。使用されていたのは、M4×11.5が12個、M4×15.5が4個でした。

エアコンのパネルには塗装や表面処理が施されている場合があり、そのままでは電気的な導通を確保しにくくなります。そこで、ねじを締め付けると3点ポッチに締付力が集中し、塗膜などを局所的に崩して金属母材に接触することで、安定したアースを確保していると考えられます。
つまり、この小さな3点ポッチは、「固定」と「電気的接続」を同時に成立させるための重要な機能形状といえます。


注目ポイント③:同じM4でも用途に応じて仕様を細かく使い分ける
今回の解体では、M4サイズのねじが多く使用されていましたが、すべてが同じ仕様ではありませんでした。外装パネルにはプラスチック製平座金付きのセムス、アース部分には3点ポッチ付きのねじ、その他の箇所には一般的ななべ小ねじや三価ホワイト品などが使用されていました。さらに、ねじ長さについても11.5 mm、11.8 mm、12 mm、15.5 mm、15.8 mmなど複数の仕様が確認できました。

このような使い分けから、締結対象、必要な締結長さ、表面状態、電気的要求、耐食性などを考慮して仕様を選定していることが読み取れます。一方で、要求機能が重複する仕様については、標準化によって種類を減らせる可能性もあります。
注目ポイント④:ねじ以外の機械要素も機能ごとに配置
今回の解体では、ねじ類だけでなく、袋ナットやフランジナット、ベアリング、シャフト、止め輪、ばね、波座金なども確認しました。
特にベアリングとシャフトはファンなどの回転機構を支え、止め輪は部品の位置保持に使用されています。また、ばねや波座金なども含め、固定・回転・位置保持・荷重調整など、それぞれの機能に応じて機械要素が組み合わされていることが分かります。

改善案:締結部品の標準化による種類削減と在庫管理の効率化
今回の解体では、同じM4サイズでも、ねじ長さ、頭部形状、座金の有無、表面処理などが異なる締結部品が複数使用されていました。これらは使用箇所ごとに必要な機能がある一方で、設計上許容できる範囲で仕様を整理できれば、締結部品の種類を削減し、標準化を進められる可能性があります。例えば、強度、締結長さ、電気的導通、絶縁、接触面保護、耐食性などの要求仕様を整理したうえで、複数の類似ねじを共通仕様へ統一できれば、部品点数の削減につながります。
締結部品の種類を減らすことは、単に設計を簡素化するだけではありません。購買品目の削減、在庫管理の簡素化、発注・保管スペースの削減、組立時の部品取り違え防止、調達コストの低減など、設計から製造・調達・物流まで幅広い効果が期待できます。
ただし、アース用の3点ポッチやプラスチック製平座金のように、特定の機能を担っている仕様まで一律に統一すると、製品性能や安全性に影響する可能性があります。そのため、「何でも統一する」のではなく、必要な機能を明確にしたうえで、機能を満たせる範囲で標準化することが重要です。

まとめ
今回の家庭用エアコンでは、確認できた締結部品は合計約130個で、M2~M5までのねじを中心に、ナット、ベアリング、シャフト、ばねなど、さまざまな部品が組み合わされていました。
解体してみると、外観からは見えない内部にも多くの締結部品が配置されており、限られたスペースの中で、組立性やメンテナンス性も考慮しながら部品が配置されていることが分かります。家庭用エアコンは身近な製品ですが、熱・空気・回転・電気といった異なる要素が一つの製品に集約されています。その中で締結部品は、それぞれの部品を確実に結び付け、製品全体を成立させる重要な役割を担っています。

今回の解体を通じて、普段は意識することの少ない「ねじ一本」にも、製品を成立させるための設計上の工夫があることを改めて確認できました。
次回予告
次回は、身近な家電製品であるドラム式洗濯機を対象に、解体分析を行います。ドラムを回転させるモーターやベアリング、振動を抑える構造、扉まわりの機構など、洗濯・脱水時の大きな荷重や振動に対応するため、さまざまな締結部品や機械要素が使用されています。
回転・振動・荷重を支える締結構造に注目し、実機の構成からどのような設計上の工夫が見られるのかを解説します。
どうぞお楽しみに。


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