ねじの豆知識「ピン」 第二回 JIS規格にあるピン 位置決め・接合
今回はJIS規格に載せられている規格品のピンの具体例をいくつかご紹介しましょう。取り上げるのはまっすぐな円柱状をしたシンプルな形状のピンです。
「規格」は、ピンの品質を一定以上に保つための重要な指標となっています。
ねじの豆知識「ピン」
第一回 「ピン」とは
第二回 JIS規格にあるピン 位置決め・接合(本稿)
第三回 JIS規格にあるピン ゆるみ止め・外れ止め・回転軸・軸の相対移動を防ぐ
第四回 「ピン」の使用例(近日公開)
第五回 特殊ピンという選択肢(近日公開)
平行ピン(JIS B 1354 2012)
規格品のピンで代表的なものは「平行ピン」でしょう。断面が円形で側面が円筒になっている頭なしのピンとシンプルな形です。頭の無い円筒形の平行ピンは機械や治具などの各接続部材へリーマ穴を設けて打ち込み、固定や位置決め用として使います。


平行ピンを組込むことで高い精度での組付けが行え、メンテナンス時の分解・再組立てで高い再現性を持たせることが出来ます。
高い寸法精度を持ち、穴との嵌合(すきまばめ、中間ばめ、しまりばめ)で使用します。機械部品の位置決め、治具の位置基準、分解・再組立が必要な箇所のガイドなど、主に部品同士の位置を正確に合わせるために使われます。材料としては鋼とオーステナイト系ステンレス鋼(A1)とされ、それぞれについて硬さや表面処理についての規定があります。公差域クラスm6又はh8とされています。なお,受渡当事者間の協定によって,他の公差域クラスを用いることができます。表面粗さについては公差域クラスm6のピンではRa≦0.8 μm、h8のピンではRa≦1.6 μmです。
平行ピンは現行規格では端面の形状は受渡当事者間の協定によるとされています。旧JIS規格には形状の違いでA種、B種、C 種が存在しました。A種は端面の一方が平先、もう一方は丸先です。一般に平先側から挿入します。軸部許容公差がプラス目(嵌め合い公差m6)です。平行ピンB種は両端面とも平先でマイナス公差(h7)となり精度がやや劣ります。C種は面取りがありません。

取り外しが容易なように平行ピンの一端にめねじを設けた“めねじ付の”平行ピン(JIS B 1359:2012)も定められています。めねじ付き平行ピンの種類は材料及び硬化処理によって区分し、硬化処理を行わないものを1種、行うものを2種と分類します。さらに2種は鋼製で焼入焼戻しをするものをタイプA、浸炭焼入焼戻しするものをタイプBとしています。



テーパピン(JIS B 1352-1988)
テーパピンは、慣れてくると見分けられるようになるのですが、一見すると平行ピンとそっくりです。断面は円形ですが,平行ピンとは異なりわずかにテーパ(円錐状)になっている頭なしのピンです。基準円錐のテーパ比は1:50(テーパ501)になっています。テーパピンの小端部に軸方向の割りを入れた先割りテーパピンと呼ばれるものもあります。


テーパピンの種類は,テーパ部の表面粗さによって2種類に区分します。A種はRa=0.8 μm(主に研削により製作)、B種はRa=3.2μm(主として旋削により製作)となっています。
また材料は鋼は熱処理をしない場合はSUM 22〜SUM 24L、SGD 41−D 又はS 43 C〜 S 45 。熱処理をする場合はS 43 C〜S 50 C。ステンレスはオーステナイト系ステンレスのSUS303です。
テーパ形状により抜けにくい構造となり、打ち込むことで固定されるので、位置決めと固定を同時に行えるという特徴があります。打ち込むほど締まり、逆方向から叩けば抜けるため、確実な固定とメンテナンス性を両立できます。そのためシャフトとハブの固定や振動が多い部分の締結補助に用いられます。一般的に、組立精度を重視する用途では平行ピンが、保守性を重視する用途ではテーパピンが選ばれる傾向があります。
平行ピン同様にねじ付きのテーパピンの規格 (JIS B 1358-1990)もあります。おねじ付き止めねじ付きがあり、めねじ付きテーパピンにもA種とB種があります。


ダウエルピン(JIS B 1355:2012)
ダウエルピンの名称は英語の“dowel (材木と木材を接合する際に用いる “ダボ”)”からきています。二つの部材のリーマ穴に挿入して位置決めを行うピンなので“dowel pin(英)”の名称で呼ばれています。ノックピンやダボピンとも呼ばれることもあります。
ダウエルピンは平行ピンの一種で焼入硬化をした精度の高いピンで、一般には,位置決めなどに用います。
“平行ピン”と比較して高精度・高強度の為、再組立てが多い箇所や金型等に組立て時の位置決め、再組立て時の再現性(元通りに精度よく組み立てること)を得るために使用します。


鋼製のタイプAは焼入れ焼戻しを施すもので硬さは550 HV30〜 650 HV30、タイプBは浸炭焼入焼戻しをし表面硬さ:600 HV1〜700 HV1、深さ0.25 mm〜0.4 mmにおける硬さを550 HV1以上とされています。ステンレス製はマルテンサイト系 ステンレス鋼(C1)を材料とし460 HV30〜560 HV30の硬さに焼入焼戻しすると定められています。
公差域クラスはm6、表面粗さはRa≦0.8 μm、です。


金型用ダウエルピン(JIS B 5062 : 2000)
主にプレス金型,プラスチック用金型,ダイカスト金型,ゴム金型などに用いられるためのダウエルピンは「金型用ダウエルピン」呼ばれています。ねじ穴なしのA形とねじ穴ありのB形が定められており、どちらにもさらに許容差の違いで1種と2種があります。2種の方がより精度が高いものとなっています。軸断面も違い、A形は真円、B形は空気抜き溝付きとなっています。


今回は、JIS規格にある位置決めに使われることの多いいくつかのピンについてご紹介しました。次回は、JIS規格にあるゆるみ止め・外れ止めに利用されるピンについてご紹介します。
参考:「公差」の考え方
平行ピンの性能を決める大きな要素が「公差」です。一般的には、ピン側の公差として「m6」や「h7」などが指定されます。
例えば「m6」は、基準寸法よりわずかに大きめに仕上がる公差域で、圧入を前提とした用途に使われます。一方「h7」は、基準寸法より小さめに仕上がるため、挿入しやすく、すきまばめや中間ばめに適しています。
この違いにより、同じ直径のピンでも「抜けやすい」「しっかり固定される」といった機能差が生まれます。
はめあいと公差
ピン単体ではなく、穴との組み合わせで考えるのが「はめあい」です。「H7」や「h7」といった記号で表されます。一般に大文字は穴、小文字はピン(軸)を表し、数字は公差の大きさを示します。例えばH7/h7の組み合わせは、加工性と精度のバランスが良く、標準的な仕様として広く使われています。代表的な組み合わせとしては以下があります。
・H7 / h7:標準的な位置決め(軽いすきま〜中間)
・H7 / m6:圧入による固定
・H8 / h9:緩いはめあい(着脱重視)
記号の読み方
① 大文字=穴、小文字=軸
② 文字=位置、数字=大きさ
③ 組み合わせで機能が決まる
ポイントは、「ピンと穴はセットで機能が決まる」という点です。ピンだけを見て選定すると、設計意図とずれる可能性があります。


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